キミを描きたくて
別れる。確かに最初は早く別れを切り出そうかななんて考えることもあった。

でも、彼がいてくれてありがたいとも思うことがある。


「どうなんですかね、わかんないや」

「…依茉ちゃん。僕は、あんな男似合わないと思う」


思い出すのは、ついさっきの教室でのこと。


"誰がハーフで顔良いだけで、俺とは育ちから何もかも合わなくて、陰キャなの?"

"誰かって聞いてるんだけど、僕。聞こえてない?"

"ふーん、なんでもないんだ。ま、全部聞いてたけどね〜"


彼に私は似合わない。
それは、私と会長の関係性をあまり知らない隼人くんでも見てわかることなんだ。

…それはそうか。

私は会長と違ってなにか輝くものを持っているわけでもなければ、むしろどす黒い感情ばかり。
"付き合ったならば、それに見合う女になろう"と考えたこともない。


「…まあ、まだ難しいか」

「初めて、だったんです」

「そうだね、確かに彼氏の話はあいつが___」

「初めて、私の絵を知らないで、話してくれました」


"人物画、ねぇ...悪いけど、キミには描かれたくないかな"
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