【書籍化&コミカライズ】身代わり聖女の初夜権~国外追放されたわたし、なぜかもふもふの聖獣様に溺愛されています~
 それを見ながら、わたしは毎回思っていた。

(おじさんも、そろそろ疑問に思うんじゃないかしら……)

 肖像画の中の子供たちはどんどん成長していくのに、ヴォルフとわたしは変わらない。
 きっと画家のおじさんも、途中からは不思議に思ったことだろう。
 それでも彼はなにも言わず、二十年近く家族の肖像画を描きつづけてくれたのだった。

 二十年後、おじさんはわたしに言った。

「おまえさんたちを描くのも、今年で最後になるな」

 おじさんの家の扉の建て付けが悪いと聞いて、ヴォルフと子供たちが修理を手伝っていた。
 待っている間、おじさんとふたり、あたたかいお茶をいただく。

「え? どうして? 来年もまた描いてほしいわ」

 おじさんは風邪でも引いたのか、少し咳き込みながら、ゆったりと頬笑んだ。

「体にガタが来ていてね。いやなに、病気や怪我というわけじゃない。ただ……もう寿命なんだよ」
「寿命?」
「そうなんだ。人には、天から授かった命の時間がある」

 ふだんはあまり気にしていなかったけど、そういえば彼の顔にはいつからか、深いしわが刻まれていた。
< 292 / 294 >

この作品をシェア

pagetop