Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-






駅前のモールまでやってくると、甲斐田くんはさっそく新作コスメが並べられた棚を眺めて、んー、と思案声をもらしていた。

いきなりデートだなんて言われて警戒したけど、単に買い物がしたかっただけみたいだ。



「ねえ、もしかして……」

「んー?」

「女の子へのプレゼント探してるの?」



先ほどの有沙との話もあったから、若干の呆れを含んで聞いてみる。


普段遊んでる子たちに向けて、だったりして。

それをわたしを連れながら選ぶなんて、どうなの? って思っちゃうけど。

よくやるなあ、と冷めた目で見てしまっていると、



「うん。妹たちに、ちょっとな」

「……妹?」



予想の斜め上の回答が返ってきて、きょとんとした。



「甲斐田くん、妹いるの?」

「いるいる。ませたのがふたり。双子なんだ」



思わずへえ、と大きく反応してしまった。



「意外?」

「んと。ちょっとだけ」



……でも、そういえば。

本条くんが、甲斐田くんのことを面倒見がいいって言ってたっけ。

それって、お兄ちゃんだから、というのもあるのかも。


わたしはなるほどと納得がいく。

偏見で失礼な印象を抱いてしまったことを反省して、見る目を正した。

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