Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
◇
駅前のモールまでやってくると、甲斐田くんはさっそく新作コスメが並べられた棚を眺めて、んー、と思案声をもらしていた。
いきなりデートだなんて言われて警戒したけど、単に買い物がしたかっただけみたいだ。
「ねえ、もしかして……」
「んー?」
「女の子へのプレゼント探してるの?」
先ほどの有沙との話もあったから、若干の呆れを含んで聞いてみる。
普段遊んでる子たちに向けて、だったりして。
それをわたしを連れながら選ぶなんて、どうなの? って思っちゃうけど。
よくやるなあ、と冷めた目で見てしまっていると、
「うん。妹たちに、ちょっとな」
「……妹?」
予想の斜め上の回答が返ってきて、きょとんとした。
「甲斐田くん、妹いるの?」
「いるいる。ませたのがふたり。双子なんだ」
思わずへえ、と大きく反応してしまった。
「意外?」
「んと。ちょっとだけ」
……でも、そういえば。
本条くんが、甲斐田くんのことを面倒見がいいって言ってたっけ。
それって、お兄ちゃんだから、というのもあるのかも。
わたしはなるほどと納得がいく。
偏見で失礼な印象を抱いてしまったことを反省して、見る目を正した。