Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
「来週、誕生日でさ。プレゼントねだられてたのに買うタイミングなくて。付き合わせちゃってごめんね。すげー助かる」
「あ……ううん。むしろ、わたしが甲斐田くんの時間を奪っちゃってるようなものだし……」
「だーかーら。それは気にすんなって」
ため息混じりに言われて、やってしまった、と思う。
気を遣わないように言われたのに、うんざりさせちゃったかもしれない。
慌てて気持ちを持ち直して、
「妹さんたち、いくつなの?」
話題の方向転換を図った。
「中2。だからさ、あんま大人びたもんあげてもな」
「そっか……。でも、一番にコスメを見るなんて、お洒落が好きな子たちなんだね?」
「そ。……どーするかなあ」
顎に手を当てて、頭を悩ませる甲斐田くん。
……確かに、今見てるコスメは、わたしならもらって嬉しいけど、中学生相手には早い気もする。
甲斐田くんの妹なんだから、すごく可愛らしいに違いないし、何をあげても似合うだろうけど……。
わたしはなんとなくあたりを見回して、向かいにある雑貨屋さんに目を止めた。
「あの、甲斐田くん。イヤリングとかどうかな? お洒落が好きなら、種類持ってて困ることはないし」
なにより、ピアスをたくさん身につけている甲斐田くんを近くで見てる子たちだから、喜んでくれそう。
双子なら色違いをあげるとかも、素敵。
わたしの意見に、甲斐田くんはパチンと指を鳴らした。
「それめっちゃいい。ナイス意見、平石さん」
「実はこうなることを期待して誘ったんだよね〜」なんて言われて、役に立てたようで嬉しくなる。