Ephemeral Trap -冷徹総長と秘めやかな夜-
今度は、甲斐田くんが目を丸くする番だった。
「そーなの?」
「うん。わたしも少し前に、小学生の妹ができたから、……親近感。甲斐田くんみたく、上手に仲良くはできてないけど」
「いや、わかるよ。だって元々は赤の他人なワケだし。しかも歳離れてると、難しーよな」
「……うん」
こんなこと、自分から打ち明ける日がくるなんて。
家族のことを話したのは飛鷹を含めてふたりめで、驚きだ。
だけど……。
同級生に似た境遇の人がいるとわかって。
甲斐田くんの言葉に、わたしの心の一部を肯定してもらえた気がして。
なんだか少しだけ、肩が軽くなった気がした。
「甲斐田くんの妹さんたちは、……嬉しいだろうな。甲斐田くんみたいな人がお兄ちゃんになってくれて」
「なんだそれ」
だって、こんなに真剣にプレゼントを選んでくれるんだもん。
誰が見ても素敵なお兄ちゃんだ。
……わたしとは、大違い。
プレゼントをあげたことすらなければ、……どんなものを好きかだって、知らないんだから。
小学生の女の子の好みなんて、今のわたしにはちっともわからない。
「じゃーおれ、会計してくるね」
いつの間にか、何を買うか決めていたらしい。
わたしに声をかけてきた甲斐田くん。
その手の中には、カラーストーンが綺麗なイヤリングがふたつ。