【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
「ヒューバート兄上っ、助けてください! エマニュエルが突然、こんな」

 セドリックがヒューバートのもとに駆け寄ると、エマは大きな声で叫んだ。

「違います! これは違うのです!!」

「セドリック、何があった? お前が呼んでいると聞いて、探していたのだが……。エマ、これは一体どういうことなのだ」

「わたくし……ちゃんとわけを話すから、ヒューバートと二人になりたいわ。お願いよ、ヒューバート、信じて」

 ヒューバートはしばらくためらってからエマにうなずき、セドリックに何やら小声で話していた。セドリックは少し抵抗したものの、大人しくその場を去った。





「ヒューバート、ごめんなさい。こんなことになるとは思わなかったの」

 二人きりになると、エマがひどく悲しそうな表情を作って、ヒューバートに語りかけた。

「セドリックはまだ子供なのね。きつい性格のアーリア様には甘えられず、わたしのことを姉のように慕ってくれて……可哀想なセドリック」

「セドリックにはいつ会ったのだ。まだ兄上にもセドリックにも紹介されていないと聞いたが」

「ええ……、わたし、元平民だから嫌われているのかしら。国王陛下も王妃殿下も冷たくて……」

 はらりと美しい涙をこぼす。迫真の演技というべきなのか、嘘が感じられないのがすごい。

 ふと思った。
 もしかしたらエマはまだ前世のまま、ゲーム感覚でいるのだろうか。この世界が、リアルに人の生きている現実だと実感せずに、自分がプレイヤー、神のような存在であると信じきっている……?

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