【書籍化】婚約破棄された悪役令嬢ですが、十歳年下の美少年に溺愛されて困っています
 そうか。令嬢鉄仮面があったから、確かに普段はあまり表に出さなかったかも……。

「それよりも、隙って? ホールでの挨拶は変でした?」

「ううん、理事長としての挨拶は立派だったよ。そういう意味じゃなくて……」

「…………?」

 セドリックは少し首を傾げて、綺麗な青空の色の瞳でわたしを見つめた。

「学園長に対して……、男子生徒に対してもだけど、つけこめそうな隙を見せすぎている。前にも言ったでしょう? 一見完璧な王子妃であるあなたが、ふと見せる隙がどれほど魅力的か」

「ふと見せる隙……」

 そんな隙なんて見せたっけ?

「わからない、か。正直、僕と同年代の生徒たちを警戒しすぎて、年上の男はそれほど考えていなかったけど……」

 年上の男、かあ。
 今日、間近で言葉をかわした年上の男性は、学園長のエドワード様くらいかしら。

 じゃあ、もしかしてあの動揺が『隙』なのかしら?

「え……?」

「理解してくれた?」

 正解なの?
 わたし、何も口に出してないわよね?

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