その海は、どこまでも碧かった。

「宙、どこか寄りたいとこあるんだっけ?」



「ん、ごめん
やっぱりなかった

水瀬があおくんのこと気にしてたから
店を出たかった」



そんなに私

気にしてたかな?



気にしてたかもね



「碧くんが女の人といたから
ちょっと動揺してたかも…」



「オレたちは
付き合ってるふうに見えたかな?

だからさっき、慌てて手繋いだんだ、オレ

オレは水瀬と付き合ってますアピール

とりあえず手繋いだら
そんなふうに見えるかな?って…」



付き合ってますアピールって

誰に?



碧くんに?



「オレは、水瀬のこと、好きだから…」



宙の声が不安そうだった



「宙…」



背伸びしたら

宙が近くなった



私から近くなったのに…



宙の唇と重なるはずだったのに…



私の唇は

宙の手のひらにあたった



拒まれた



私だけ先走ったみたいで

恥ずかしくなった



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