お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~

「保護猫?」

「はい。 その人、動物好きで、よく捨てられてる子を拾ったりしてるんですけど、その度に飼えないかと聞かれて。 今は実家も出てますし、マンションと、航太郎さんが良いと言ってくれたら、引き取りたいなあって」

私は航太郎さんに子猫のことを相談した。
隣で車を運転する彼の反応にドキドキする。

「マンションはペットOKだよ。 俺も動物は好きだし、何より翠が喜ぶなら。 今度、会ってみたいな」

「本当ですか? じゃあ、航太郎さんの都合のいい日教えてください! 彼と相談しておきます」

「彼……。 今度の日曜なら休み取れるよ。急だけど大丈夫かな。でも子猫と会う時は、必ず俺と行こうね」

「……? もちろん、航太郎さんと一緒に行くと伝えます」

なんだか妙な圧力を感じるのだけど……そんなに猫が好きだったのかな。
なにはともあれ、良かった。航太郎さんが賛成してくれて。
早速明日、冴木に話そう。





日曜日の昼下がり。
私と航太郎さんは、冴木の住むマンションを訪れていた。
しかしマンションに近づくにつれ、『本当にこの道で合ってる? ほんと?』と何度も確かめられたのが気がかりだ。
無事、事前に送ってもらった住所に到着したが、マンションを見た瞬間から航太郎さんはずっと何も言わない。
どうしよう。航太郎さんが何を思っているのか全く分からないけれど、ここまできて引き返すのも、冴木にも悪いし。
昨日まであんなに楽しみにしていたのに、本当にどうしちゃったんだろう。

不安を覚えながらも、オートロックを解除されたマンションに足を踏み入れる。
航太郎さんは私に着いてくるけれど、どうにも足取りが重そう…というか、表情が無い。
でも私が振り返り顔色を伺うと、いつものようににっこりと笑う。
ほんと、なんなんだろう。
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