お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~
「…っ、航太郎さん、あの…」
「なに?」
「て、手を、離してくださいっ」
「ああ、これね。 ほんと、慣れないよねー」
航太郎さんは目を細めてくすくすと笑って、布団の中でしっかりと握っている私の手をにぎにぎとする。
「毎回違うスキンシップに可愛い反応を見せてくれるのは、俺的にはやりがいを感じるけど。他の男とちょっと手が触れただけでも、ひゃっとか声出しちゃいそうで、心配」
どこにやりがいを感じているんだか…。
私を真似ているつもりなのか、にこにこしながら甲高い声を出してみせる航太郎さん。
「航太郎さんにされると、ドキドキするんです。他の人に触られても何も感じませんよ」
正直に言うと、航太郎さんはふにゃんと表情をくずして勢いよく抱きついてくる。
そのまま私の髪を撫でくりまわすので、おかけでくしゃくしゃだ。
「もー、せっかく時間かけて乾かして梳かしたのにー」
「じゃあ、今からもう一回お風呂入る?一緒にさ」
この流れでどうしてそういきつくのかわからない…。
隙あらばそんなことばっかり考えてるんだ、航太郎さんは。油断も隙もないよ。
「ほら、汗かいたでしょ」
「入りませんってば!」
意味深な笑みを向けてくる。
明日も仕事なのに、夜中の一時をまわっても起きているのは、さっきまで航太郎さんがなかなか離してくれなかったから。
たしかに、ちょっと汗ばんだけど。
おかげで肌着も何も身についていないから、涼しいでありますよ。
「体は許してくれるのに、お風呂は許してくれないよね」
「だ…って、なにもお風呂まで一緒に入ることないじゃないですか…」
「一秒でも長く一緒にいたいんだよ。好きな人と」
航太郎さんはいつでも私をドキドキさせる。
これでもかというくらい甘やかしてくれるから、恥ずかしくて嬉しくて楽しくて。
幸せだ。
こうやってささやかな幸せを噛み締める度に、忘れそうになる、松下さんの存在。
あの人が明日もマンションの前で待っているかと思うと、少しだけ俯きたくなる。
航太郎さんと一緒の時は、下なんか向く暇を与えられないことがほとんどだけど。
相手にしないと決めたのに、ふとしたことで思い出しては不安になる自分が嫌だ。
自分で決めたこと。航太郎さんに余計な心配はかけたくない。
なにより、言いつけを守るわけじゃないけど、航太郎さんには言うなって口止めされているし。
そっと航太郎さんを見上げると、彼はふわりと優しく微笑む。
キュンと鳴いた胸に手を当てて、航太郎さんの厚い胸板に顔をうずめた。