お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~


「おかえりなさい、航太郎さん」

「ただいま。 ん?なんか良い匂い…」

「あ、わかります?材料が揃っていたので、シフォンケーキを作ってみました。お嫌いでなければ、食後に食べましょう」

なんて、嘘だけど。
本当は材料が揃っていたんじゃない。
買いに行きました。
今日はいつもより遅くなるかも、と航太郎さんから連絡が来たので、暇を持て余した私は、ひとりでいると松下さんとのやりとりが蘇ってきて焦ったり、いや大丈夫だと強がってみたり…とにかく思考回路がおかしくなって忙しいので、彼女がちゃんと帰ったかどうかを確認したかったのもあり、わざわざ買い物に出たのだった。

そして、航太郎さんが帰ってくる前には完成させられるお菓子を選んで、作ってみた。
お菓子を作ることなんて今までも数える程しかなかったので、言ってしまえば魔が差したようなもの。
これで航太郎さんが喜んでくれればラッキーってくらいだ。

「家庭料理だけじゃなくて、菓子作りも得意だったなんて。惚れ直した……翠、好きだよー」

さらりと言ってくれた最後の一言は無視して。とくに、お菓子が嫌いってわけではなさそうで一安心。
気まぐれで作ったとはいえ、レシピ通りの見た目に仕上がったし、味は大丈夫なはず。
無視した航太郎さんからの愛の告白を時間差で堪能して、スーツを脱ぎにいった航太郎さんの背を眺めながら、頬が綻びそうになるのを堪えられなかった。

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