お見合い婚で一途な愛を ~身代わり妻のはずが、御曹司の溺愛が止まりません!~


その翌々日の事だった。
珍しくマンションの前に松下さんの姿がなくて、もしかして昨日のアレで諦めた?なんて呑気なこと考えていたのだが、一日経って彼女はまた姿を現す。

「ねぇ、あなた。何かしらの理由をつけて彼と別れてよ」

突然そんなことを言い出すので、ぽかんとして松下さんの目を見つめ返す。
こんなにはっきりと別れてと言ってきたのは初めてだったからだ。
今までは、あくまで私が自ら離れていくのを促す…っていうスタンスだったんだと思う。

「聞いてるの?ねえ、一昨日はなんとかケーキ?を作って航太郎くんを騙し落とそうとしたそうじゃない」

なんとかケーキ…シフォンケーキのことだろうか。
なんでその事を知っているのかが不思議でならない。
というか、騙し落とすも何も、あの手この手で落とされたのは私だよ。

「どうしてご存知なんですか?シフォンケーキを作ったら、航太郎さんがとっても喜んでくれたこと」

うん、嘘は言ってないよね。
喜んでくれていたし。
けれどトゲのある言い方をしたので、松下さんはぎろんと私を睨みつける。

「彼が、そのことを嬉しそうに後輩に話していたからよ!」

感情が昂って、本当のこと言っちゃってません?

「ええー、航太郎さんてば、会社でそんなことを?恥ずかしいなあ」

我ながら嫌味なやつ。
だけど私、あなたに会いたくないの。
会いたくない人と会ってしまって、こんな言い方しかできない。
どうマウントを取り返してやろうかばかり考えてしまう。
いい大人が、感情をコントロールできないなんて情けないやら恥ずかしいやらだけど、相手も同類なので気にしないことにする。
< 70 / 80 >

この作品をシェア

pagetop