愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「綾星さん、大丈夫ですよ。最初からそんな風にしていれば、次はきっと幸せな結婚ができますから」

 言いながら思った。
 これは離婚旅行なんだからと。

 私は空を見上げていて、隣に座っている彼がどんな顔をしたかはわからない。
 けれどもきっと、私の離婚の意志は固いと胸に刻んでくれたはずだ。

 なのに、ポンポンと私の肩を叩いた彼は、にっこりと笑みを浮かべる。

「まあそう言わず。俺たちは夫婦じゃないか」

 え。もしかしたら、彼はへこたれない人なのか?
 色々意外すぎる。

 全力でタクシーを追いかけてきた時もとっても驚いた。あんなことを綾星さんがするなんて、なにかの罰ゲームみたい。

 まあでも、あれはいい思い出になったと思ったら、笑いがこみ上げた。

 思わずクスッと笑ったのがバレてしまった。
「ん?」

「いえ、綾星さんは――」

 笑顔で私を覗き込む彼はまるで別人である。
 大企業の専務という仮面を外した彼は、明るくて気取りのない爽やかな好青年。

 意外とクールじゃないんですねとは言えず、話を変えてみた。
「苦いものが苦手なんですよね。ゴーヤとか」

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