愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「星光が好きなもの。これだけは覚えてるよ。うれしそうに食べていたから」

「あの時、綾星さんが選んだのはピスタチオフロマアージュだったわ」

「おっ、覚えていてくれたのか」

 そんなにうれしそうにしなくても。

「おいしい」

 甘酸っぱいオレンジの風味が口いっぱいに広がって、疲れた体に染み込んでいく。

「気持ちいいなぁ」

 眩しそうに目を細めて、綾星さんは空を見上げる。

「晴れてよかったですね」

「ああ、そうだな」



 その日の夜は宿場にある宿に泊まった。

 今回の旅の最大の難所は夜。
 ビジネスホテルじゃないので部屋をふたつ取るのは不自然だ。同じ部屋に泊まるしかないけれど、枕を並べるのは相当気まずい。

 そこで考えたのは、お酒で爆睡作戦。
 酔った勢いでストンと寝てしまえば、彼は紳士だから大丈夫。間違いは起きない。

 昨夜泊まった宿では成功した。
 今夜は歩き疲れているから、飲まなくても瞬く間に寝てしまえるだろう。


「お疲れー」
「お疲れさまでした」

 日本酒で乾杯をする。
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