愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~

 目が覚めたのは彼の腕の中だった。

 綾星さんの意外なほど逞しい裸の胸が目の前にある。私は横向きの彼に抱えられるようにして寝ていたらしい。

 困った。
 初めて迎えたこんな朝はどうしたらいいんだろう。
 恐る恐る顔を上げると――。

「おはよう」

「お、おはよう……ございます」

 さんざん乱れて、恥ずかしさも忘れるほど狂わされて。

 本当にあれは自分だったのかと、信じられないけれど、悲しいかな夢ではない。

 羞恥心に襲われてうつむこうとすると、顎を指先ですくわれたと思いきや、ほんの挨拶のように彼はキスをする。

 ゆっくりと、名残惜しそうに離れる唇。

 目が合うとまた恥ずかしさが込み上げて、彼の胸の中に顔を埋める。

 クスッと笑う彼は「かわいい」と囁いて私を抱き寄せる。お願いだから、その〝かわいい〟は止めてと言いたいけれど、言ったらもっと言われそう。

 離婚旅行なのに、これじゃ新婚旅行じゃないの。

 なんだか複雑な気持ちではあるけれど、何はともあれようやく私は心身共に大人の女性になれた。
 それは素直に喜ぼう。

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