愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 綾星さんはどうかといえば、すっかり距離が近くなった。

 妻籠宿を散策する間、彼は私の手を引く。

 彼のせいで私はすっかり疲れているし、実際そうしてもらったほうが楽だからいいのだけれど。私とは逆に見違えるほどに元気になった綾星さんは私の荷物まで背負いそうな勢いだ。

「今晩も温泉なんだろう?」

「はい。温泉に泊まって、明日からレンタカーで、松本城を見学しようかと」

「おお、いいねー国宝だ! 行ってみたかったんだ」

 子どもかっ、と突っ込みたくなるくらい楽しそう。
 冷酷なくらいクールなんじゃなかったの?

 表情も違って、ひと月前の彼とはもはや別人である。


 一回だけですよ? と言ったはずなのに、その夜もなんだかんだとそういうことになってしまった。

 おかげで私はレンタカーの中でうとうとと寝てしまい、駐車場でキスをされて起こされるという始末。もはやバカップルの勢い。

 松本城でもずっとうれしそうだった。
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