愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
だからって……。
「はぁ」
GoJオフィスビル、専務室の窓辺でついた深いため息がガラスを曇らせる。
左右に首を振ったところで扉がノックされた。
考えたところで仕方がない。言い出したのは彼女で、俺にできることは何もないのだ。
気を取り直し、返事をして席に戻った。
入ってきたのは第二秘書の五月心羽。
目が合うと彼女は柔らかく微笑み、俺もつられて口角が上がる。
「おはようございます」
「おはよう」
五月はコーヒーと一緒に薄いピンクの包みを置いた。
「今日はサンドイッチです」
彼女はいつもこうして俺の朝食を用意してきてくれる。
「ありがとう」
「では本日のスケジュールを読み上げます。お食事しながら聞いてくださいね」
月曜は社内会議が多い。午前中から分刻みのような予定を読み上げる五月の声が、左から右に流れていく。
集中力を高めようと思うが上手くいかない。
「以上です。あら専務、食欲がないのですか?」
「いや、頂くよ」
「朝食はしっかりとらなくちゃダメですよ。では、何かありましたらお呼びくださいね」
トレードマークのような明るい笑顔を残し、五月は専務室の扉の向こうに消えていく。
サンドイッチの包みを横にずらし、コーヒーカップを手に取ると、再び扉がノックされた。