愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
 ふと義兄の『氷室と結婚させる』という言葉が脳裏をよぎった。
 思わず苦笑が零れていたらしい、美々子が「お兄ちゃんだって呆れちゃうわよねぇ」と言う。

「元々、綾星には五條の当主として申し分ないよう、美々子と結婚させるつもりでいたんだ。まあ、順番は違ったが、子どももいないしちょうどいいだろう」

 ――は?

「そうですよ。花菱なんて、あんな下品な血が混じるなんて想像するだけで恐ろしい」

 凄いな、伯父も伯母も。
 泣きながら花菱一郎に礼を言っていたその口で、よくも言えたものだ。

 一体どこから突っ込んだらいいんだろうと思ううち、次々と料理が運ばれてくる。
 高級ホテルのフレンチ。接待で使うからわかる。このランチメニューはひとり二万円だ。

 伯父が五條の本宅を手放さずに済んだのは、我が家を初めとして一族が借金を肩代わりしたからである。

 伯母は伯父と結婚したとき、持参金代わりにマンション一棟を実家から渡されているらしいが、最後まで頑として手放そうとしなかった。
 今彼等の収入はそのマンションから得る家賃収入のみだろう。

< 147 / 211 >

この作品をシェア

pagetop