愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
『私、誰でもいいから浮気しようかと思うんです』

『星光、もう一度ちゃんと彼と向き合ったほうがいい。自分を大切にするんだ。君は彼に惹かれているんだろう?』

『それはないですよ。そんな気持ちは、とっくに忘れました』

『俺には君が彼への未練を断ち切るために、そんなことを考え出したようにしか見えないぞ』

 氷室さんはやっぱり大人で、あの日は最後までスマートだった。

 ホテルのロビーには兄が待っていてくれて、私は先に部屋にいた綾乃ちゃんとホテルに泊まった。
 綾乃ちゃんは氷室さんに諭されて、私が呼んだのだ。

『ごめんね星光さん。お兄ちゃんが頼りなくて』

 私は本当の妹のように綾乃ちゃんをかわいいと思っている。

 縁が切れても綾乃ちゃんは可愛い妹に変わりないからと、正直な気持ちを伝えふたりで泣いた。あの時は離婚しか考えられなかったから。

 今だって、離婚の決意は揺るがない。

 綾星さんを受け入れているのは、ただ穏便に約束のひと月をやり過ごしたいだけ。

 でも不思議だ。
 離婚はしたいのに、今はもう綾星さん以外の男性にお姫様だっこをされるなんて考えられない……。

 そんなことを考えながら氷の月に向かった。
 今夜、綾星さんは残業で帰りが遅く深夜になりそうだという。食事も済ませて帰るというので、氷室さんへ報告がてらお土産も持ってきた。

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