愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「GPSの時計のおかげで駆け付けられた、それもありがとう」

「あ……」

 腕時計をしている左手を綾星さんの右手が取る。

「ほんとうによかった、無事で。星光に何かあったら俺は……。想像するのも嫌だ」

 私を包み込むように強く抱きしめた綾星さんは、すりすりと頬を寄せる。


「頼む、頼むから星光。ここにいてくれ。愛してるんだ」

 綾星さん?

「愛してる。大切にするよ、もう二度と悲しい思いはさせたりしない、だから」

「満天の星空、きれいでしたね」

「え?」

「starlight。綾星さんでしょう?」

 ユーザーネームはstarlightに結婚記念日。今朝、二枚目の写真がアップされていた。

 満天の星空、というよりは星が上手く撮れていない夜空だけれど、あれは木曽路で見上げた空の写真だと、すぐに気づいた。

「また綾星さんと行きたいです」

 体を離した綾星さんの目は驚いたように見開いている。

「星光?」

「綾星さんが好きだから」

「星光……。じゃあ」

 なんと言っていいかわからなくて、頷いた。

「いいんだな? 離婚しなくても」

 再び頷く私を抱きかかえ「ありがとう星光!」と子供のように喜ぶ彼に、胸が熱くなる。

 素直になってみようと思う。
 傷つくのを恐れずに、愛する人を心から愛していきたい。

 だって、こんなに愛してくれるんだもの。

 実はお見合いの席で一目惚れだったんですよと伝えら、あなたはなんて言うだろう。

 いつか教えてあげようか。
 おばあちゃんになっても綾星さんが変わっていなければ、告白してみよう。

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