愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「大丈夫か? 体調が悪いならベッドに」
「ああ、違うのよ。お帰りなさい」

「でも熱っぽい気がする」

 横に座った彼は心配そうにのぞき込む。

 私の頬にあてた手を取ってそのままお腹に持っていく。

「赤ちゃん。今日病院に行ってきたの。妊娠六週目ですって」

 目を大きく見開いた彼は、「本当に?」と声を震わせる。

「母子手帳をもらってきたわ。見る?」

「あとでいい。あとでいいよ」

 綾星さんは弾けたように満面の笑みを浮かべて私のお腹に抱きついた。

 まだ何も聞こえないだろうにいつまでもジッと耳を当てている彼は、もしかしたら泣いているのかもしれないと思った。
 そうだとしても、彼の泣き顔は見られなかった。
 私の目にも涙が溢れていたから。


 月日が流れ、子供は男の子だとわかって名前は私と綾星さんの一文字から(きら)と付けた。

 綾星さんは予想通り私には何もさせない勢いでもう大変。

『大丈夫よ? 私は元気なんだから』

『だめだだめだ。何かあったらどうする』
< 209 / 211 >

この作品をシェア

pagetop