愛しているので離婚してください~御曹司は政略妻への情欲を鎮められない~
「私が泣いていてはいけませんね。さあ、旦那さまがお待ちですよ」
「はい」

 フジ子さんは涙を振り切るように背筋を伸ばす。



「お嬢さまがお帰りになりました」

 リビングには父の他に兄もいた。

「ただいま」
「ああ、おかえり。朝食は済ませたのか?」

「ええ、大丈夫よ」

 父は新聞を畳み、兄はタブレットパソコンを脇に置く。

「フジさん、コーヒーをいれてくれるかな? 星光はどうする?」
「私はカフェオレで」

 わかりましたとフジ子さんが廊下に消えるや否や、父が口を開く。

「それで? なにがあったんだ」

 さあ、慎重にいかないと。
 ふぅ、と一呼吸おいてから答えた。

「最初から無理だったのだと思います。三年一緒に暮らしてよくわかりました」

「何が無理だったんだ? フジの話によればお前は家政婦も雇わず全て家事をこなし、五條の金も使わず、良き妻だったそうじゃないか」

「良き妻だったかどうかは。私にはわかりません」
「じゃあ五條はどんな夫だった」

 さあ、ここからが問題だ。

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