君は残酷な幸福を乞う
魔物
リビングに入ると、ソファに座って楽しそうに話している若葉がいた。

若葉が自分以外と楽しく話をする。
この可愛い笑顔、笑い声や弾む声は自分だけのモノのはず。
琉軌が若葉を傍に置いているのは、全てを支配したいから。
若葉の持つ感情や視線、声は全て自分“だけ”に向いてないと意味がない。

琉軌は髪の毛をかき上げ、グシャッと乱暴に掴んだ。

そして若葉の方に向かいスマホを持っている方の手を掴み、グッと引き寄せた。
「ひやぁっ…!!」
その拍子にスマホが、カシャンと落ちる。

「ただいま、若葉」
「あ…琉軌!おかえり!
ちょっ…痛いから離して?
それに、電話中なの」
「うん、でも…もう俺が帰ったきたから、スマホ必要ないよね?」
また琉軌の鋭い目。

「う、うん。でも一度切ってから…」
おそるおそる若葉が言うと、琉軌は若葉のスマホを広い何も言わずに通話終了ボタンを押した。

「切ったよ。デートの続きしよ?
もう、お家デートでもいい?
それとも、外に出たい?」
「もう、お家の中でいいよ」
「そっか。じゃあ…何しようか?
若葉は何したい?
俺と“二人で”」

「怒ってる?
今の電話、ちゃんと理由があるんだよ?」
「うーん。聞きたくないよ。若葉の口から俺以外の人間のことなんて……
しかも!男とか!」
「うん…ごめんね、嫌な気分にさせたね。
ただ、信じて?琉軌を裏切るようなことは誓ってないからね!」

若葉が琉軌を見上げ、目を覗き込むようにして言った。

「うん。
大丈夫。若葉のことは、信じてるよ!」
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