君は残酷な幸福を乞う
寝室に移り、琉軌に貪るように抱かれている若葉。

「ん…ぁ…あぁ…だめ……琉…軌、激し…やぁ……」
「ごめんね…まだ、終わらないよ……
止められないんだ……好きすぎて…止まれない…」

琉軌の嫉妬という怒りを、全てぶつけられていた。

「もう……だめぇ…」
「あ…ダメだよ…若葉、俺を見て?」
「琉……軌…」
必死にしがみついていた若葉の手が、パタンとベットの上に落ちた。

「若葉…若葉…若葉…起きて?
俺はまだ…まだ、満足できてないんだよ?」
しばらくぐったりしている若葉を見つめて、煙草を取り出した琉軌。
眠っている若葉の横に座り、火をつけた。
煙草を咥えたまま、若葉の頭を撫でる。

「若葉は、魔物でも棲まわせてるの?
こんなにこの俺を狂わせて、惑わせて心を奪っていく。こんなことできるの、若葉だけだよ」

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「うー、せっかく琉軌が仕事お休みなのに、私は仕事……」
月曜日。
団が職場前まで送ってくれている最中、ずっといじけたように呟いていた若葉。

「また帰りも、団と一緒に迎えに行くからね!」
琉軌も一緒に車に乗っていて、ずっと若葉の頭を撫でていた。

「若葉、着いたよ!」
「うん!ありがとう、団くん!
………じゃあ…行ってくるね!琉軌」
「うん、行ってらっしゃい!」
「フフ…なんか不思議だね」
「ん?」
「いつもは、逆でしょ?
私が行ってらっしゃいって言う方なのにね!」
「うん、そうだね」
「………キス、したいな…」
琉軌を見上げ、呟く若葉。
「うん、じゃあ…」
顔を寄せてくる琉軌。

でも口唇が重なる寸前で、琉軌の胸を押し返した。
「あ…でも、待って…!」
「え?キス、しよ?」

「したいけど…今キスしたらもっと離れられなくなるから、やめておく……」
少し俯いて、呟いた若葉だった。
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