君は残酷な幸福を乞う
若葉が車を降りて、職場まで早足で駆けていく。その後ろ姿を見ていた琉軌。

若葉から目を離さないまま、団に問いかけた。
「ねぇ、調べてくれた?
一昨日の若葉の電話の相手」
「もちろん。
若葉の同僚の男で、名前は“成田 和豊”
若葉は同期だから仲良くしてるみたいだけど、相手はきっと好意があると思うよ。
ちなみに一昨日の電話の内容だけど、今度琉軌の誕生日でしょ?そのプレゼントの相談でかけたみたい。
俺も相談受けたから。
色んな人の意見が欲しいって言ってたから、かけたにすぎないよ」

「そう。だから、裏切るようなことは誓ってないって言ってたのか」
「うん」
「でも、奴には警告が必要だな」
「そうだね。どうするの?殺るの?」
「殺るのは簡単だけど、きっと若葉が感づくよな」
「じゃあ…瑞夫に言って、事務所に連れていこうか?
きっと言葉だけで、ひれ伏すんじゃないかな?
度胸がある奴には思えないから」

「そうか。じゃあ…いいよ」

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そしてその頃の、若葉。
「おはようございます、成田さん」
「池内さん!おはよう!」
「あの、一昨日はごめんなさい!突然、切っちゃって!
「あー、びっくりしたけど、大丈夫だよ。
彼氏さんが帰ってきたからでしょ?
聞かれたら大変だもんね!
プレゼントのことだし」

「相変わらず、優しいですね。
もっと怒っていいのに……」
「そう?だって、怒る理由がないし」

「成田さんみたいな人が恋人だったら、こんな思いしないのかな……?」
「え?」
「あ、ご、ごめんなさい!変な意味はないんです!」

「なんか、悩み事?」
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