君は残酷な幸福を乞う
「結婚かぁ…女性は、やっぱ意識するよね?」
「特に私は施設育ちなので、家族に対する憧れみたいなものがあるんです。
でも、彼の言ってることも十分わかるんです」

「僕も結構、結婚願望強いから池内さんの気持ちわかるなぁ」
「え?そうなんですか?」
「うん、早くに両親を亡くしたから。
僕は、祖父母に育てられたんだ。
だからかな?家族に憧れあるよ」
「へぇー」
期待を込めたように成田を見ていた若葉。
若葉の周りにそんなこと言う人がいなかった為、とても嬉しくなったのだ。

「な、何///?」
「え?あ、ごめんなさい!つい、嬉しくて……」
俯く、若葉。
「僕だったら、すぐにでも結婚して“家族”を与えてあげられるよ?」
成田の呟きが、響いた。

「え……」
「あ……ごめん…今のなし!」
「成田さん?」
「何もないよ!ほら、仕事しなきゃ!」
「はい…」

二人は仕事に取りかかった。
仕事をしながら、若葉をチラッと見る成田。
「なんであんなこと、言っちゃったんだろ…?
池内さんのあの目に、つい…」

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仕事が終わり、そそくさと帰宅準備をする若葉。
今日は琉軌が休みの為、いつもより嬉しそうだ。

早く会いたい━━━━━
その思いだけを抱え、足早に会社を出た若葉だった。

会社から少し離れた路地裏に走って向かう。
既に、見慣れた高級車が止まっていた。

運転席が開いて、瑞夫が出てくる。
そして後部座席を開けた。
中から琉軌が降りてきて若葉に微笑んだ。

「「若葉(池内さん!)」」

「え?」
若葉が驚くのも無理はない。
琉軌の若葉を呼ぶ声に重なって、成田の若葉を呼ぶ声が聞こえたからだ。
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