君は残酷な幸福を乞う
「成田さん?どうして?」
「あ、ごめんね!あまりにも急いで駆けていったから、気になって…追いかけてしまったんだ……」

「ごめんなさい。私、急いでて……」
「僕こそ、ごめんね!
おかしいな……いつもはこんなんじゃないのに、調子が狂う。なんか、池内さんと話してると狂ったみたいに惑わされる……」
「え……あの…」
「あ、ごめんね。
じゃあ、また明日ね。お疲れ様」
成田が踵を返して去っていった。

「若葉」
「あ、琉軌!ごめんね!」

「やっぱ、若葉の中には“魔物”を棲んでるんだね。
アイツも、若葉に惑わせて狂わされてる」

「え?」
「ううん。何もないよ。
帰ろ?若葉」
「うん」
車に乗り込む、二人。

若葉の腰を抱いて、顔を覗き込んだ琉軌。
「若葉、俺今…ご機嫌ななめなんだ。
俺の機嫌直して?」
「え?」
「早く!じゃないと、ここで犯しそう……!」
「どうすればいいの?」
「どうすれば直ると思う?」
「キス?」
「うーん。そうだね。でも、それだけじゃ足りないよ」
「…………じゃあ…ここで…」
「ここで?」
「その……」
「ん?」

「あの……せ、せ…」
「何?」
「ここで…だ、抱き合う?」
「ここで?」
「あ…////いや!家に帰ってから!」
若葉は顔が真っ赤だ。

「フフ…瑞夫、ちょっと出てて!」
「了解。でも、あんま長くは勘弁してね!
一応、外だし」
「ん」
瑞夫が運転席を降り、ドアが閉まる。

「若葉、きて?」
琉軌が膝の上をポンポンと叩いた。
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