君は残酷な幸福を乞う
「お願い!これで、最後にするから!」
「え……でも、まだ一度もお金…返してもらってないし……
さすがに私もこれ以上は……」
このままでは琉軌に感づかれそうなのもあり、断っていると男が姿を現した。

「おい、まだかよ!?李々子!」
「え?だ、誰!?」
「若葉ちゃん、ごめんね……
実は……」
若葉は初めて、真実を知る。
とっくに施設は閉鎖していて、今までの貸したお金はこの男の遊び代だったと。

「李々子さん、酷い……私、今まで李々子さんや施設の為って信じて……」
「ごめんなさい!」
「返してください!!」
「はぁぁ?」
「お金、返してください!!」
若葉は、男に詰め寄る。

「ないし!
てか、あったら貸してなんて頼まねぇし!」
「だからって、私は貴方にお金を貸したんじゃありません!李々子さんや施設の為に私、貯金もくずしたんですよ?」
「はぁぁ?そんなん知らねぇ!
離せよ!!」

ドン━━━━━━!!!
と突き飛ばされ、その場に尻もちをつく若葉。
「……ったい…!」
「若葉ちゃん!!?」
「もう、行くぞ!李々子」
「え?でも……」
「はぁぁ?お前、俺の言うこと聞けないの!?」
「………若葉ちゃん、ごめんね……」
そう言って、若葉を残し去っていった李々子だった。

取り残された若葉は、一人涙を流し泣いていた。
悔しくて、悲しくて、情けなくて……

その日いつもの送り迎え場所に着くと、琉軌がいた。
琉軌はずっと忙しくてなかなか帰ってきてなかった為、李々子とのことをなんとか隠し通せていた。
でももう…愛しい琉軌の顔を見てしまうと、涙腺の緩みを我慢できるわけがない。

若葉はその場でまた涙を流し、声を上げて泣いたのだった。
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