君は残酷な幸福を乞う
家族
再びマンションに帰り着いた、琉軌達。

「夕食の準備できてるけど、どうする?」
団が声をかける。
「若葉、食べれる?」
「ごめんなさい…食欲が……」
「ん。じゃあ…寝る?」
「うん…
ごめんね…団くん。
せっかく作ってくれたのに……」
「ううん。冷蔵庫に入れておくから食べれそうだったら温めて食べて!」
「ありがとう」

若葉は琉軌に支えられ、寝室に向かった。

琉軌の腕枕で横になる、若葉。
ゆっくり頭を撫でる、琉軌。

「琉軌」
「ん?」
「琉軌が私を奥さんにしないのは、こうゆうことも関係する?」
「うん、そうだよ。
俺と家族になったら、若葉は俺の罪を一緒に背負っていくことになる。
そんなことさせたくない。
だからって若葉を手放すことも、俺にはできない。
だからせめて、恋人でいてほしいんだ」

「ご両親のこと、まだ許せない?」

「うん、アイツ等のせいで俺は地獄を見たから。
あんな思い二度と嫌だ」

琉軌の実母は犯罪者だ。
琉軌の実父はDVが激しく、母親や琉軌にかなり酷い暴力をふるっていた。
その地獄に耐えきれず母親は、父親を殺したのだ。

日々の暴力からは解放されたが、代わりに犯罪者の息子という偏見の目で見られ続け、ある意味暴力よりも酷い地獄を見たのだ。
だから琉軌は両親のことを、一生許せないでいる。

「親父が暴力なんてふるわなければ、お袋が殺さなければこんなことにはならなかった。
何か犯すと全員に迷惑がかかるんだ。
“家族”ってだけで、俺も犯罪者だ。
“家族”なんて、ただの集団なのに」
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