君は残酷な幸福を乞う
「え?」
「俺はずっと考えてた。
どうすれば、世界の王になれるのか。
人間の心の中の醜いとこを使えばいいってことはわかってたんだけど………
親父を殺した時にお袋が言ったんだ。
【ただ…普通に暮らせてたら良かっただけなのに、結局欲張ってもっといい暮らしがしたい、もっと服が欲しい、もっともっと…って願ってしまった…
その結果がこれ…】って!
親父が暴力をふるいだしたのは、お袋が親父に給料が安いだの、隣の奥さんは頻繁に旅行に行ってるだの言ったからなんだ。
それを聞いて俺は思った。
あぁ、これ…使えるって!」

「施設に来た時に“俺は世界の王になる”って確信してたのは、もう頭の中では出来上がってたんだね」
「そうだよ。俺なら出来るって確信してたから」
「殺し屋みたいなのを思い付いたのは、なんで?」
「それも欲張りな人間の性だよ。
アイツさえいなければ……とか思ったことあるだろ?
そこをつくんだよ!
普通はね、犯罪なんて犯せない。
頭に血が上ったり、よぽっどの恨みがない限りは……
それを代わりにして、しかも絶対捕まらないなんて言われたら、頼みたいって思うのが普通だよ。
特に立場が上にいけばいくほど……
だから、俺は偉い人間の弱みを握れる。
そうなれば、もう思い通りだよね?」

「そんなこと考えてたの?」
「うん、そうだよ」
「…………」
「退いた?」
「す、少し…」
「だよね」
「でも……」
「ん?」
「放れないよ」
「うん。
てか、放さないよ。俺は絶対に!
俺はワガママで、欲張りだから!」

「ほんと、残酷な人……」

「そうだよ。
俺は犯罪を犯し続けても捕まらず、若葉の本当の願いも聞き入れず、残酷に若葉を囲う。
それが“市川 琉軌”だよ」

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