ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


「そういや、むぎ。お茶は?買いに行ったんじゃなかったの?」


「あ……」


かんっぜんに忘れてた。

結局お金受けとってからあのまま逃げちゃって、買うこと、すっかり頭から抜けてた。


「あっ、えっと、たまたま買いに来てる人が多くて。あきらめたの」

「そうなんだ」

「「変なやつに絡まれなかった?」」


渚と、那咲……ハモってる……。


「う、うん、大丈夫……あ、でも、鳳くんと、朝日くんには会ったよ」


「鳳と……朝日に?」

「うん」


少し声を低くした渚。


「……」


なにを考えてるのかわからないけど、さっきのは事故だし、昨日もショッピングモールのことで散々心配かけたし、言わないでおこう……。


これからキャンプも始まるのに、これ以上渚の不安を煽りたくない。


「むぎ」

「ん?」


「これ、俺といっしょに飲も」

「ありがとう、渚」


今朝私が入れてきたお茶。

ちょっとこだわって私がブレンドしてるんだけど、いつもおいしいって飲んでくれるから、すごくうれしい。


「なあなあ、この間から気になってたんだけど!
渚のお弁当って、星見の手作り?」


「うん。今日は渚が作ってくれたんだけど」


毎日私が作るよって言ってたんだけど、たまには俺にも作らせてって言うから、お言葉に甘えて。

にしても、渚、彩りよすぎ……。
< 209 / 332 >

この作品をシェア

pagetop