ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
「そういや、むぎ。お茶は?買いに行ったんじゃなかったの?」
「あ……」
かんっぜんに忘れてた。
結局お金受けとってからあのまま逃げちゃって、買うこと、すっかり頭から抜けてた。
「あっ、えっと、たまたま買いに来てる人が多くて。あきらめたの」
「そうなんだ」
「「変なやつに絡まれなかった?」」
渚と、那咲……ハモってる……。
「う、うん、大丈夫……あ、でも、鳳くんと、朝日くんには会ったよ」
「鳳と……朝日に?」
「うん」
少し声を低くした渚。
「……」
なにを考えてるのかわからないけど、さっきのは事故だし、昨日もショッピングモールのことで散々心配かけたし、言わないでおこう……。
これからキャンプも始まるのに、これ以上渚の不安を煽りたくない。
「むぎ」
「ん?」
「これ、俺といっしょに飲も」
「ありがとう、渚」
今朝私が入れてきたお茶。
ちょっとこだわって私がブレンドしてるんだけど、いつもおいしいって飲んでくれるから、すごくうれしい。
「なあなあ、この間から気になってたんだけど!
渚のお弁当って、星見の手作り?」
「うん。今日は渚が作ってくれたんだけど」
毎日私が作るよって言ってたんだけど、たまには俺にも作らせてって言うから、お言葉に甘えて。
にしても、渚、彩りよすぎ……。