ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。
***


それから放課後。


「じゃ、また明日ね、むぎ!」

「渚も!また明日なー!」


いつも通りふたりと別れて、ホテルへと帰ってきた。


「ホテル暮らしも結構慣れたな」

「うん」


私たち専用のエレベーターがぐんぐん上にのぼっていって。

ガチャン。

ドアがしまって。


「おかえり、むぎ」

「んっ……」


渚が私の唇にそっと口づけて。

「渚も。おかえりなさい」


私も渚の唇に。


「ん、ただいま」


お互い顔を見合わせて、笑って。

ぎゅうって抱きしめ合って。

いつもと同じルーティン。

でも今日は、いつもとちがう。


「速攻行くって行ったけど、一旦着替える?」

「ううん……このまま、がいい」

「ん、よしよし」


ぎゅっとしていなきゃ、聞こえないほど、小さな声。

いつもなら帰ってきて、ごはん食べて、お風呂に入って、それで特訓。


でも今日は、帰ってきてすぐ、制服のまま。


「暑くなると思うから、クーラー強めとく。
寒かったら我慢しないで、ちゃんと教えて?」


「うん……」


「ちょっとまってて」


私をベッドまでお姫さまだっこで運んだ渚は寝室を出ていって、またすぐに戻ってきた。


「水分補給。水飲もうな」
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