ふたりきりなら、全部、ぜんぶ。


言い合いをしてるようで、どこか仲良さげなふたり。


今回のことがなかったら、ふたりが関わることも、私が朝日くんと話すことも、きっとなかった。


「朝日くん」


「なに?」


「朝日くんの気持ちはうれしいけど、その気持ちには応えられません」


「うん……」


「でも、私のこと、好きになってくれて、理解してくれてありがとう」


「っ……」


体質のこと、教えてくれたアドバイス。

ぜんぶ、ぜんぶ忘れない。


「……おい、なに照れてんの」

「べつに照れてない。てか口挟まないでくれるかな」


ほんのり耳を赤くして話す朝日くんと、不機嫌そうに顔を歪める渚。


「ふふっ、」


「え?」「は?」


「息ぴったりだね、ふたりとも」

「「べつに」」

「「あ……」」


「ふふっ、やっぱそうだね」


クスクス笑う私に、ますます朝日くんは顔を赤くして、渚は髪をぐしゃぐしゃっとする。
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