すべてが始まる夜に
「私、松永部長だったら、その後も誘われたとしても着いて行くだろうな。その後って3次会じゃないよ。部屋ね。お・部・屋!」

「もう、葉子さんってば。お昼から何言ってるんですか。笑っちゃうじゃないですか。一応出張なんですよ。出張!」

「でも若菜ちゃんもそう思わない? あのイケメンがどんな風に抱いてくれるのかと想像したらドキドキしちゃう」

「そう言われたら1回くらいは……」

葉子も葉子だけど、もう、若菜ちゃんまで!
ここは社食って言ってるのに!

「ちょっと葉子、ここ社食だってば。他の人に聞こえちゃうよ」

「もう、茉里は心配性なんだから。大丈夫だって。茉里、もし松永部長に誘われたらチャンスだからね。それでどうだったか教えて。最高だったとか、超絶に上手かったとかさ……」

勝手に想像して顔を赤らめている葉子の言葉に、松永部長の彼女が言い放った言葉が蘇る。

悠樹のような下手なセックスしかしない男はね、女は誰も満足しないと思うわ──。
顔がイケメンだけで自己中で下手なセックスしかしないなんて、少しはセックスの技術でも磨いたら──。

私は思わずゴホゴホとむせ込んでしまった。
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