すべてが始まる夜に
「こうして並べて置くとなんだか可愛いね」

「仲のいい俺たちみたいだな」

そう言って口角を上げた部長が私の手を掴み、指の間に自分の指を絡ませてきた。

ドクン──と胸の奥で大きな音が鳴る。

「茉里が彼氏と初めて過ごすクリスマスイブだから、恋人同士がすることをたくさんしないとな」

部長がとても柔らかな表情で微笑んだ。

世の中のカップルは毎年こんな風に手を繋いでクリスマスイブを過ごしているのだろうか。こんなにもドキドキするクリスマスイブは生まれて初めてだ。

それにどうして今日は、いやここ最近は部長と一緒にいるとこんなにもドキドキするんだろう。
旅行に行こうと誘われてからは特にそうだ。

私は部長の手の温もりを感じながら、気持ちを落ち着かせようと窓に映る景色を見つめていた。

東京から熱海まではこだまで約50分なので、あっという間に熱海駅に到着した。

「東京から熱海ってこんなに近いんですね」

「新幹線だと近いよな。ほんとは車で来ようかとも考えたんだが、時間を有効に使うには新幹線の方がいいと思ってな」

駅のコインロッカーにスーツケースを預けて、私たちはお昼ごはんを食べるために駅前の商店街の中を手を繋いで歩いていった。時間がちょうど11時半ということもあってか、美味しそうな海鮮のお店の前には既に行列ができ、商店街の中も多くの人で賑わっている。

「店の前に結構人が並んでるな。みんな昼メシ食べるんんだろうな」

「そうみたいですね。でも12時過ぎるともっと多くなっちゃうかな?」

「そうだな。俺たちもどこか並ぶか。熱海と言えば海鮮だから、寿司とか海鮮のお店でいいか?」

笑顔で「うん」と頷き、どこか良さそうなお店がないか探していると、商店街の向こうに行列を見つけた。
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