すべてが始まる夜に
「茉里、あれが大楠だって。樹齢2000年以上らしいぞ」

「うわぁ、ほんとだ。すっごいおっきい……」

「ほんとにすごい幹だな。これはパワースポットだと言われるだけあるな」

たくさんの人がこの大楠の周りを囲んで見上げたり、写真を撮ったりしている。
私たちも近くへ行き、その巨大な大楠を見上げた。

「ほんとにすごい迫力だね。それに生命力もすごいよね。樹齢2000年以上って……。悠くん、私たちすっごいパワーがもらえそうだね」

「茉里、この大楠を一周すると寿命が1年延びるらしいぞ。それと心の中で願いごとをしながら1周するとその願いが叶うんだって」

「お願いごと? ………それってさっきと同じお願いごとじゃないとダメなのかな?」

「んっ? さっきと違う願いごとにしたいのか?」

「うん、できれば……」

「俺は神様じゃないからわからないが、心から願ったら神様はきっと叶えてくれるんじゃないか?」

口角を上げて微笑んでくれる部長に、そうだよね──と微笑み返して願いごとを頭の中に思い浮かべる。
そして、その願いごとを心の中で呟きながら大楠の周りを部長と一緒に歩き始めた。

『神様、私は一緒にいる隣の悠くんにいっぱい迷惑をかけています。だけど悠くんは嫌な顔せず、私にいろんなことを教えてくれます。今日もこうして熱海まで連れてきてくれました。だからきちんとお礼がしたいです。レッスンが終わるまでに、悠くんが一番喜んでくれることを私に教えてください。よろしくお願いします』

そう心の中で願いながら──。
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