すべてが始まる夜に
「茉里、どうした?」

部長が、急に黙り込んだ私の顔を覗き込んできた。

「な、なんでもない……。ほ、他のカップルの人たちは何を話しているんだろうね……?」

心情を悟られまいと、無理やり笑顔を作って笑ってみる。

「他のカップル? きっとお互いに好きだって囁き合ってるんじゃないか?」

「えっ?」

「クリスマスイブだからお互い愛を確認し合ってるんだろ。俺たちはさっき部屋を見て、お互い好きだって抱きしめ合ってたけどな」

好き──。

昼間、神社でお参りしていたときは、部長に対する好きの意味が尊敬なのか、恋なのか、恋人同士としてレッスンをしているからなのかわからなかったけど、今やっとわかった。

わ、わたし……。
部長のことが好き、なんだ……。

部長と一緒に笑ったり、ごはんを食べたり、手を繋いだり、抱きしめられたり、触れられたり、ぜーんぶ部長のことが好きだからドキドキして嬉しかったんだ。

今自分に向けられている優しい笑顔が、その眼差しが他の人に向けられるなんて考えただけで辛くなる。

部長はこれからどんな人を好きになるのだろうか?
わがままだってことも、自分勝手だってこともわかっているけれど、誰のことも好きになってほしくない。
彼女なんて作らないでほしい。

ずっと、ずっと部長と一緒にいたい──。
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