すべてが始まる夜に
「茉里、準備できた? 大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

「じゃあ、朝ごはん食べて、それから今日の予定を考えよっか」

うん、と笑顔で頷いて、私たちは昨日の夜と同じレストランに向かった。

朝食もまた昨日の夕食と同じように美味しいだけでなく見た目も可愛くて、お洒落な花籠の中に色とりどりのお野菜の小鉢や、焼き魚、焼きたて出汁巻き玉子などが盛りつけられ、炊きたてのごはんに具だくさんのお味噌汁、お出汁の温豆腐に新鮮なサラダ、そしてフルーツジュースなど、盛りだくさんの朝食だった。

大きな窓から目の前に広がる海と青い空を見ながら、大好きな人と一緒に食べる朝ごはんは格別に美味しくて、私はお腹も心も満たされた。

「悠くん、コーヒー飲んでから出発でもいい?」

部屋に戻ってきた私は、スーツケースの中に荷物を入れている部長に声をかけた。

「俺もちょうど飲みたいと思っていたんだ」

「ほんと? じゃあ淹れるね」

カップにカプセルのドリップコーヒーを淹れ、ソファーテーブルの上に置く。
スーツケースに荷物を入れ終えた部長が、「ありがとう」と言いながらソファーに座った。

「茉里、少し早いけど13時頃の新幹線で帰ろうと思うんだけどいいかな?」

「うん、わかった。昨日の商店街にもう一度行ってもいい?」

「いいよ。今9時だろ? ここを9時40分くらいに出れば、ハーブガーデンにも行けるけど、どうする?」

「ほんと? ハーブガーデン行きたい!」

「じゃあ今日はそのプランにしよっか」

笑顔で頷くと、部長が優しく私の肩を抱き寄せてきた。
そのままもたれかかるように、部長の肩に頭を預ける。

あらためて部屋の中を見渡しながら、部長と本当の恋人同士になれたこのお部屋をもうすぐチェックアウトしてしまうのは残念でもう少しここにいたい気もするけれど、こればかりは仕方がない。
私は忘れないように、この部屋を目に焼きつけた。

「悠くん……」

んっ──?と、静かにコーヒーを飲んでいた部長が斜め上から私の顔を覗き込む。
私は寄りかかっていた身体を起こして、そのまま部長の方に身体を向けた。

「えっと……こんな素敵なところに連れてきてくれてありがとう。それと……こんなに幸せなクリスマスイブを過ごさせてくれてありがとう。あと……こんな私のこと好きになってくれて本当にありがとう……。まだ夢みたいで半分信じられないけど……、悠くんが大好きです」

初めてのクリスマスイブを過ごした感謝の気持ちと、今の幸せな気持ちを伝えたかったのに、何にも気の利いた言葉なんか思いつかず、小学生の作文みたいになってしまった。

自分が情けなくて、部長に向ける笑顔も上手く笑えなくてぎこちない。
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