すべてが始まる夜に
じっと私に視線と向けていた部長が、手に持っていたコーヒーカップをテーブルの上に置いた。

「お前はいつも……」

そう呟いた瞬間、ぎゅうっと強く抱きしめられる。

「また俺を暴走させる気か?」

「ぼう、そう?」

「ほんとにお前は……。茉里、一番うれしいクリスマスプレゼントだよ。ありがとな、俺を好きになってくれて」

抱きしめられる腕の力がさらに強くなった。
夢じゃないんだという事実がうれしくて、私も部長の背中に手をまわして抱きしめる。

「茉里、東京に帰ったら話したいことがあるんだ」

「話したいこと?」

ああ、東京に帰ったらな──と言いながら部長は抱きしめていた腕を解いた。

「それにしても、お前は今までよく誰とも付き合わずに俺の前に現れてくれたよな。俺はマニュアル本とやらに感謝するよ」

「感謝?」

「ああ、あの本がなかったら、茉里はとうの昔に誰か他の男のものだっただろうからな」

私の髪の毛をくしゃくしゃとして、にこっと微笑む。
そして部長はソファーから立ち上がると、私を抱き上げた。

「えっ、ゆっ、悠くん、なにするの……?」

部長は優しい表情をして口元で弧を描いているだけで、何も教えてくれない。
そのままベッドの上に私をおろすと、上から見下ろすように、私の身体の横に両腕をついた。
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