すべてが始まる夜に
「悠くん、これ、どうするの……?」

私は歩きながら髪の毛を少し持って、首元を部長に見せた。

「おお、今回はしっかりとついてるな。場所も理想的だ」

「りっ、理想的って……。こんなとこにあったら隠せないし、明日絶対にバレちゃうよ……」

「そうだな、バレるだろうな」

「えっ?」

「そのためにつけたんだから。諦めろ、茉里」

斜め上から優しい眼差しで見つめられると何も言えなくなってしまうけれど、でもこれだけはちゃんと言っておかないと、これからまたどんどんつけられそうだ。

「悠くん、今度からつけるなら首以外がいい……」

「首以外? どうして?」

「だって、もし悠くんが彼氏だってわかったら、みんなに悠くんとエッチなことしてるのバレちゃうもん……」

会社で他の人に部長とエッチなことをしている想像なんかされたら恥ずかしくてたまらない。

「いいじゃないか。俺たち恋人同士なんだから」

「恋人同士でもそんなのバレたらもう悠くんと一緒に仕事ができない。恥ずかしくて会社辞めたくなっちゃうもん」

「えっ? 会社を辞める?」

「うん。だってきっとみんな想像しちゃうじゃん。悠くんとエッチしてるとこ……。そんなのやだ……」

なんだよ、茉里──と、部長が大きな溜息を吐いた。
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