すべてが始まる夜に
「じゃあ、首以外だったらいいのか?」

「うん。首以外だったらいいよ……。だって……悠くんがいっぱいついてて嬉しいもん……」

恥ずかしくて少し視線を下に落とすと、部長は突然立ち止まり、私の頬を両手で挟んだ。

「お前はさっきから俺を下げたり上げたり……、この天然野郎! もうさっさと買い物して、東京に帰るぞ!」

部長は再び私の手を握ると、商店街に向かって歩き始めた。

商店街で温泉まんじゅうや、温泉プリン、焼きたてのお煎餅に、おでん用の練り物セットを買い、葉子と若菜ちゃんに美味しそうなお菓子を選んで、私たちは熱海駅に戻り、コインロッカーからスーツケースを取り出して新幹線に乗った。

東京駅で降りて上野まで戻ってきたら、時刻はもうすぐ14時半になろうとしていた。

マンションの前に着いたところで、なんとも言えない寂しさが込み上げてくる。
部長と2日間ずっと一緒に過ごしていたことで、まだ離れたくなくて一緒にいたい気持ちが胸の中を締めつける。

「やっと着いたな。2日間楽しかったな」

「うん……すごく楽しかった」

「茉里、荷物置いたらさ、明日の準備して上にあがってきてくれないか?」

「明日の準備?」

「うん。今日はウチに泊まるから、明日会社に行くための準備な。服とかメイク道具とかあるだろ?」

「えっ? 今日も悠くんと一緒にいていいの?」

「茉里に話したいことがあるんだ。だから、ゆっくりでいいから準備して、できたらあがってきてくれるか?」

部長と今日も一緒に過ごせると思っていなかったので嬉しくて堪らないけれど、話っていったい何なんだろう?

私は、わかった──と返事をすると、自分の部屋に戻り、明日の準備をして部長の部屋へと向かった。
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