すべてが始まる夜に
「茉里、どうして泣くんだよ」

「だって……男の人に……こ、こんなプレゼント、してもらったの……初めてだから……。うれしくて……」

「全くお前は……。茉里、これから俺と一緒に、茉里が初めてのことをどんどん増やしていこう。じゃあ、そのネックレス、着けてくれるか?」

うん、と頷くと、部長は立ち上がって私の後ろにまわり、ネックレスを首元につけてくれた。

「うん、よく似合ってる。茉里の肌だと、ゴールドよりシルバーの方が似合うと思ったけど、やっぱり正解だったな」

満足そうに笑顔を向ける部長に、「悠くん、ほんとにありがとう」と涙を拭いながらお礼を言うと、部長はとても嬉しそうな顔をして抱きしめてくれた。

そして部長は再び椅子に座ると、今度は真剣な顔を私に向けた。

「茉里、話というか、相談というか、俺たちの今後のことなんだけどな……。俺たち、この部屋で一緒に暮らさないか?」

えっ──? と目を見開いて、部長の顔を見る。
一緒に暮らす……?

「ゆくゆくはもう少し広いマンションを買うか借りるかして一緒に住みたいと思ってるけど、広いマンションを探すにしても時間がかかるだろ? 今は同じマンションだし、行き来するよりここで一緒に暮らさないか?」

部長はそう言ってポケットの中から1本の鍵を取り出し、テーブルの上に置いた。
その鍵を見て、また驚いてしまう。

「これはうちの鍵だ。これからは今みたいにインターホンなんか鳴らさずに、この鍵でここに入ってきてほしい」

いったいどういうことなんだろう。
驚きすぎてなんて返事をしていいのかわからない。

「そ、それって……。悠くんと、同棲……するってこと?」

「同棲……そうだな。言葉だとそうなるのかな。俺はな、近い将来、茉里と結婚したいと思っているんだ。茉里と出会うまではそんなこと一度も考えたことなかったんだけどな」

またまた驚く “結婚” というキーワードが出て、もうどうしていいのかわからない。
心音がドクンドクンと音を立てて早くなり、飛び上がるほどすごく嬉しい言葉なのに、こんなに早く決めてもいいものなんだろうかと不安な気持ちも出てきてしまう。
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