愛しの鳥籠〜籠のカギ篇〜
カラリ。と、グラスの中の氷が涼やかな音を立てた。
もうすぐ、日が暮れる。
すっかり長居をしてしまったようだ。
ユキへの恐怖心が失せたわけではないけれど、なんせ話しが合う。この間の電話の時もそうだった。話し出すとブレーキが壊れたジェットコースターみたいに楽しい話しも失恋した悲しい話しもユキとなら嫌な感情にならずに出来るのだ。
もう何杯おかわりしたのか分からないアイスティーを飲み干すとわたしはラグからヨロヨロと立ち上がり、
「ごめん、長居しちゃって。わたしそろそろ…」
帰るねーー。そう言おうとしたのをユキは優しく下げてた目尻をくっ…と引き締めて立ち上がったわたしの右腕をグイッと自身の方に強く引っ張って思い切りバランスを崩したわたしはそのままユキの胸に飛び込む形になった。
そして、そんなわたしをユキはそのまま強く抱きしめた。
「っっ」
声にならない声をあげているわたしをよそに、ユキはわたしを抱き締める力を強めた。
「ラン…」
甘い。
なんて甘い声でわたしの名を呼ぶの。
そんな声、出されたら全てが麻痺してしまう。
昼間、あんなに感じた恐怖心さえもーー。