愛しの鳥籠〜籠のカギ篇〜

その日は夜の9時になっても病むことはなく、レシートに書かれた番号を見てはソワソワしていた。

電話しちゃおうか、どうしようか…。

出掛けるわけではない。ただ電話するかどうかってだけなのに、胸下まである艶のある黒髪を櫛でといてみたり、着てる服におかしな所はないか姿鏡で確認までしてしまう始末。

鼓動も速さを増して普段血色の悪い頬も、じゅわっと赤みをさしている。

こんなドキドキするのは初めてかも知れない。

そもそも、この番号が彼のケータイの物なのか何の確証もないというのに。

もしかしたら悪質な業者の番号で、かけたら最後、個人情報を根こそぎ奪われる可能性だってゼロじゃない。

でもーーー、

やっぱり何かが始まるんだって期待の方が勝って、緊張と興奮で小刻みに震える指を使い、一桁ずつ確実に数字をプッシュしていき、最後の一桁を打ち終え、通話ボタンを勢いのままにタップした。
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