ぽっちゃりナースですが、天才外科医に新妻指名いただきました

「でも、河合先生に、進藤先生から処置を教えてもらえって」

 原研修医の担当は外科部長の河合先生らしい。『ちょうど進藤先生が処置をやるから見せてもらえ』とでも言われて来たのかな。

「そのつもりで来たが、今の君に教えられることはないと判断した」

 食い下がる原研修医を、進藤先生は言葉のナイフで切って捨てた。

「いいか、患者さんたちを直接ケアしてくれるのは看護師だ。薬を飲ませるのも塗るのも、点滴も採血も、オペの準備も、退院調整も、看護師がいなければできない。彼らがいなければ、病棟は崩壊する」

「はあ……」

「看護補助者も、事務員も、みんな必要なんだ。敬意を持って接しろ。それができない君にはなにも教えない。以上、医局に帰れ」

 進藤先生は一方的に言うと、スタスタと歩いていってしまう。

 あとに残された原研修医を見ると、全く納得していないような顔をしていた。いたずらを怒られてすねている子供みたいな顔だ。

「自分は全然悪くないのに、どうして怒られるんだ」って思っているんだろうな。

「高場さん、補助に入れそう?」

 急に立ち止まった進藤先生が、廊下から私を呼んだ。

「はいっ、今すぐ!」

 びっくりして、その場で飛び上がりそうになった。実際は重いので、床から足が浮くことはほぼないけど。

 ドテドテと体を揺らして走っていくと、すれ違った患者さんに「地震かと思った」と笑われたけど、今は面白い返しをする余裕もなかった。

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