【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】
「美桜の惨めな姿を見ておかなきゃ、気が済まないの」
「馬鹿なことをしたね。美桜ちゃんだって、わかっただろう? 宮ノ入社長に自分が釣り合わないってことくらい」
「ふさわしいとでも思ったのかしら?」
「それは勘違いだよ」

 そんな言葉を二人から言われ続け、連れてこられたのは、ボロボロの木造アパートで、掃除もしていないほこりっぽい部屋だった。
 そこへ放り込まれた。
 なにもない部屋は真っ暗で、他の部屋も使っているのか使っていないのか、住人の気配がない。

「宮ノ入さんの部屋の鍵は、私がもらってあげるわね。美桜にはこういうアパートがお似合いよ」

 ここには、私の持ち物はひとつもなく、食べ物も水もなかった。

 ――すべて失ってしまった。

 叩かれた頬も体も痛かったけれど、涙も出ず、暗闇をただ見つめた。
 梨沙はこんな汚い幽霊屋敷みたいなアパートに、長居したくないと言って、一臣さんを連れて出て行った。
 薄い壁は電車が通るたび、うるさい音がして、窓ガラスからはその電車の光だけが差し込む。
 僅かな光の中で、白く見えた銀色の指輪。

「瑞生さん……」

 私の持ち物はたったひとつだけ残されていた。
 もらったばかりの婚約指輪。私は胸元の指輪をお守りのように握りしめ、寒く暗い部屋で一晩過ごしたのだった。
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