若き社長は婚約者の姉を溺愛する
一緒にいたい人
 私が社長ではなく、瑞生(たまき)さんと呼ぶようになり、社内の服装もクールビズ仕様に変わった。
 瑞生さんが宮ノ入に入社するまでは、導入されていなかったそうだ。
 会長は口うるさいほうではないけれど、他の役員たちが反対していたらしい。
 ネイビーのウエストベルト付きのワンピースにシンプルなシルバーのネックレス、ストライプのリボン付きシャツとパンツ、パンプスなどを揃えて、会社のロッカーに入っていた。

「あの大量の服は八木沢(やぎさわ)さんの仕業ですよね? 私のロッカーの鍵を開けないでください」
「瑞生様からのプレゼントです。ロッカーの鍵はきちんと閉めておきましたが、なにか問題でも?」
「閉まっていたらいいっていう問題じゃありません!」

 八木沢さんは二週間の謹慎の後、復帰した。
 殴られた痕が消え、いつも通りだったけど、心なしか瑞生さんを怒らせないよう注意を払っていたようにも思える。
 よほど堪えたのか、今もまだパワーダウンしている。
 でも、仕事ぶりはいつもどおり。
 
「不在の間、瑞生様の食事の管理をしていただいたお礼です」
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