怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
しばらく進んだところでようやく悠正さんが立ち止まり、私の腕を解放してくれた。けっこう強めに握られていたのもあり、反対の手で思わずそこをさすってしまう。
「ごめん、大丈夫?」
悠正さんが心配そうに見てくるので「大丈夫です」と答える。
「それよりも良かったんですか? 鏑木さんを置いてきてしまいましたけど」
「あいつのことは気にするな。それと、さっきのも全部忘れていいから」
珍しく強い口調でそう言った悠正さんが再び歩き出す。そのあとを私は黙って追いかけた。
さっきの……とは、鏑木さんとのやり取りのことだろう。とても気になることを話していたけれど、忘れてと言われてしまえばもうそれについて尋ねることができない。
そんなもやもやとした気持ちを抱えながらしばらく進むと、悠正さんの行き着けだというお寿司屋さんに到着する。
そこでいただくお寿司があまりにも美味しくて、先ほどの鏑木さんとのやり取りを私はひとまず忘れることにした。今は、お寿司を堪能したい。
私があまりにも幸せそうに食べていたからか、また今度連れてきてもらうことを悠正さんと約束して私たちはお店をあとにした。