怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「これから行きたい場所、ここから少し歩くんだけど大丈夫? 優月、たくさん食べていたから歩きながらお腹痛くならないか心配だな」
「だ、大丈夫ですよ」
悠正さんに笑いながら言われて恥ずかしくなった私は「歩けます!」とはっきりと告げた。
確かに、美味しくて食べすぎてしまったけれど歩けないほどではない。
「それじゃあ歩こうか。はい」
悠正さんが自身の左手を私に差し出す。どうやら手を繋ごうとしているらしく、私はそっと彼の手に自分の手を重ねた。
そのまま指をからめるように握られ、悠正さんがゆっくりと歩き出す。
時刻は午後九時を過ぎているものの、周辺はまだ人が多く行き交っている。高いビルが立ち並ぶエリアを悠正さんと手を繋いでしばらく進むと、目の前にはひと際高くそびえるビルが見えてきた。
有名な施設だから知っている。ここは、企業の事務所や飲食店、ホテル、美術館、映画館などが集まった大型複合商業施設だ。
悠正さんの目的はどうやらこのビルらしく、慣れた足取りで進んでいき辿り着いたのは五十二階にある屋内展望フロア。