怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
弁護士はひとりでいくつもの案件を抱えている。
ひとつの訴訟が終わったくらいで安堵してもいられない。次の案件が控えているし、新規の依頼だって舞い込んでくる。
慰労会に参加している余裕があるなら、その時間を書面の作成に使いたいというのが俺の本音だった。
なにせ弁護士の仕事は作成すべき書類が山ほどあるのだ。いったい俺がいくつの案件を同時に抱えていると思っているんだ。と、慰労会に対して少しうんざりしていた。
どうせ俺を労ってくれるなら優月とふたりで食事に行ける機会が欲しい。その方がよっぽど俺は元気になれるし、一瞬で疲れなんて吹っ飛ぶのに……。
けれどそんな本音はきれいに隠して、にこやかな態度で慰労会に参加した。乗り気ではないが主役である俺が参加しないわけにもいかない。
営業時間終了後の午後七時からケータリングサービスを利用して事務所の共有スペースで始まったその会には、同僚弁護士や事務員のほとんどが参加していた。
その中に優月の姿を探そうとしたものの、そうするだけ無駄だと思いやめた。